大学受験界隈で「上滑り」という用語があることをご存じですか?一生懸命難しい問題に取り組んで努力しているのだけど、まったく成績が上がらないという状態のことです。よく鉄緑会に通っていて結果が出ていない生徒さんが陥るということで、中高一貫校出身の講師たちが、「上滑り」について話をしてくれます。驚くことに、優秀な講師たちでも「上滑り」を経験していて、その上滑りの解消のためにかなりの時間を投入して克服してきたということなので、「上滑りは怖い」とよく話をしています。
なぜ、将棋教室の本Noteにそのような話を書いているかというと、将棋の世界でも同様に「上滑り」というものは発生しているのではないかと。いろいろ有名な先生に教わってみたり、将棋教室の講座に参加してみたり、棋書を買って読んでみたり、、、それでも棋力が向上しないということであれば、それは将棋の世界の「上滑り」が発生していると思いますので、いちど、お子様の将棋の状況について細かく観察してみることをお勧めします。
「努力をしているのに一向に結果が出ない」というのは努力の仕方に問題があることがほとんどですので、誰かがアドバイスをしてあげないと、時間だけが経過してしまいます。
「上滑り」の原因を探るには、やはり「観察」が最重要でその第1歩かと思います。将棋ではないのですが、当校の算数科の講師がどのように生徒の学習の状況を観察して保護者様にメッセージを送っているかという実例が以下になります。(偶然ですが、このメッセージを送った講師は開成将棋部出身で、将棋ではなく算数・数学でその実力を発揮している講師です。)
小学校5年生の9月に保護者様にあてた手紙です。講師がレッスンの様子を観察して一生懸命書いてくれました。
中学受験の、特に算数において、たくさん問題を解いているのに一向に成績が上がらない方にはある特徴があります。それは「上滑り」しているということです。
上滑りとは、基礎ができていないにもかかわらず問題の答えだけは多少当たっているためにさらに難しい応用問題ばかり解いていることを指します。この「上滑り」ばかりしていると、たまたま答えが「当たる」ことはあっても一向に解ける力は身につかず成績が上がりません。
上滑りの怖い点は、勉強自体はたくさんしていて問題も解いて、さぼらずに努力しているのにもかかわらず全く実力がつかず成績も上がらないところです。
Sさんの場合現在小学5年生なので中学受験における小学5年生の問題を解いていますが、算数の実力に関しては昨年度海外にいらっしゃったこともあり小学4年生の基本的なことの理解が不十分な可能性が非常に高く、算数の現在学習されているグノーブルの5年生教材で扱っている内容全てに関してこの「上滑り」をしているように見受けられます。そのため一度小学4年生レベルの基本的な問題に立ち戻り基礎を固めることを優先された方がよろしいかと思われます。
この「上滑り」状態から脱却するためには、現在解いている問題より易しい問題群に戻り徹底的に基礎を固めることが必要です。一般に大手塾では、分野ごとに基礎から応用まで一回の授業で一気に進むため、出来る子には十分ですが、苦手な人には基礎を固めることができないまま通り過ぎていくことが多いです。そのため単に塾に通い続けわからないまま放っておくのではなく、それとは別に基本的な問題集を「わかるまで」繰り返す必要があります。
「○○○○塾」の夏季講習の授業プリントの回答の様子を拝見させていただきました。感じたことは以下の点です。
・授業プリント全体(例えば比例/反比例の回)を見ると解いている問題が非常に少ない→おそらく授業では本来もっと多くの問題を扱っていると思われるため、推察するに授業内容を理解できていないため恐らく授業に集中できておらずわからないまま放置しているため更に理解できなくなるという悪循環に陥っている
・計算メモで120÷15や80×12を計算するのに筆算を用いていた、他にも同様の記述が多く見受けられた.そのうえ84×17を計算ミスしていた→小学五年生レベルの計算能力が身についておらず、簡単な計算にも非常に時間をかけている
・特に平面図形の分野については(ほかの分野以上に)授業プリントが空白であった→図形を理解できておらず特に苦手である可能性が高いと思われます
対策・指導方針案
(1)どのレベルまで戻る必要があるのか
上滑りを完全解消するために確実にできるレベルまで戻る必要があると思います。
学年関係なく分野によって必要であれば小学三年生レベルまで戻ることも検討された方がよいかと思われます。
(2)どの分野を優先するか
特に苦手な図形以外の、数に関する分野について小学4年生の内容を復習しそれと同時に計算ドリルのようなもので計算力をあげることを、小学五年生の間に行い、小学六年生以降から小学五年生の内容及び平面図形へとシフトしていき小学六年生の前半までに塾で扱うレベルに追いつくことを目指していくことを提案させて頂きます。
将棋の世界でも同じように棋力に上滑りが発生しているお子様がいらっしゃる気がします。ただ、算数などと違い、棋力の「上滑り」の原因究明は簡単ではないというのが実感です。当校では棋譜をできる限り収集し、様々な観点で分析を行い、複数名の講師でその原因について検討を行い、結果をお子様自身がわかるように言語化して伝えていますが、試行錯誤の毎日です。
最後に、手紙を受け取った生徒さんは、一念発起し9月から週4日間通塾して小学校3年生からの範囲の総復習をしたのですが、3か月間で偏差値が一気に20以上改善し、これから勝負の小6を迎えることになりました。
いろいろ頑張っているのに結果が出ない、というときは今一度基本的なところから取り組みを見直してみると良いと思いますし、そのために多面的な分析を行うことをお勧めいたします。



